台北の街を初めて夜に歩いたとき、こんなに近くにこんな景色があったのかと、素直に驚いたのを覚えています。夜景写真家として2017年から台湾取材を続けてきて、台湾に住んでいた時期もあり、昼と夜でまったく表情を変えるこの国の魅力を、今も飽きずに追いかけています。取材を重ねるなかで見えてきたことが、いくつかあります。
なぜ台湾夜景をそんなに勧めるのか。理由は、実はとてもシンプルです。
台北松山空港の展望デッキから望む夜景
普段、日本国内で夜景を撮っている人にとって、海外というだけでどうしても心理的なハードルを感じるものだと思います。言葉、移動、治安、機材を持っての夜間行動。どれも国内なら気にならないことが、海外となったとたんに不安材料になってしまいます。
でも台湾は、沖縄からほんの少し先です。東京から台北まで、飛行機でだいたい3〜4時間。国内旅行の延長線上のような感覚で行けてしまうのが、台湾の一番の強みだと思います。金曜の夜に出て、土日で夜景を巡って、月曜の朝には仕事に戻る。そんな弾丸日程でも十分に楽しめてしまう距離感は、「はじめての海外夜景」を考えている人にとって、一番腰を上げやすい選択肢になるはずです。
台北駅近くのカメラ街
これは実際に取材を重ねるなかで、身をもって気づかされたことです。以前、ある国で息をのむほど美しい夜景に出会ったことがあります。ただ、その場所は治安に不安が残るエリアで、結局、記事として自信を持って紹介することができませんでした。日本にいるだけでは気づかなかったのですが、夜景は「美しいこと」だけでは紹介できないのです。夜遅くに一人で機材を持って歩ける安心感があってはじめて、自信を持って人に勧められる夜景になります。
台湾は、その点で圧倒的に条件が揃っています。繁華街や観光エリアは深夜でも人通りが残っていて、夜遅くに三脚を立てていても落ち着いて撮影に向き合えます。台湾の夜景を勧め続けられているのは、この安心感があってこそだと感じています。
台湾の夜景を語るうえで外せないのが、そのバリエーションの豊富さです。
象山から望む台北の夜景
台北なら、まず象山からの夜景は定番中の定番です。麓のビューポイントまで15〜20分ほど歩く必要があるハイキングコースですが、その分、台北101を中心に信義エリア一帯の大都会らしい夜景を一望できます。台湾の観光ガイドブックの表紙を飾ることも多く、外国人観光客にも広く知られたスポットです。
澎湖国際海上花火フェスティバル
夏には澎湖国際海上花火フェスティバルがあります。澎湖の馬公市にある観音亭園区で開催され、海上から打ち上げられる花火が、夜空だけでなく穏やかな湾内の海面にも映り込むのが最大の特徴です。開催期間が数か月にわたる長丁場なので、旅行の時期を選びやすいのも利点です。
新北市歡樂耶誕城
冬には新北の板橋エリアで、新北市が主催する台湾最大級のクリスマスイベント「新北市歡樂耶誕城」が開催されます。市民広場に大型のクリスマスツリーが設置され、プロジェクションマッピングや光の装飾が街を彩ります。台北市が年越しを担う一方で、新北市がクリスマスシーズンを盛り上げるという役割分担があり、板橋ならではの冬の風物詩になっています。
迪化街年貨大街
旧正月が近づくと、迪化街の一帯で「迪化街年貨大街」が開催され、特有の賑わいを見せます。もともと乾物や漢方薬を扱う問屋街として栄えてきたこの通りに、大量の紅い提灯が吊るされ、普段の落ち着いた雰囲気から一変して活気あふれる年末市場へと姿を変えます。
台湾ランタンフェスティバル
そして旧正月後の元宵節前後には、台湾ランタンフェスティバルが台湾各地を持ち回りで開催されます。その年の干支をモチーフにした巨大な主灯が中心に据えられ、点灯の瞬間には音楽と光の演出で会場全体が沸き立ちます。開催都市が毎年変わるため、その年ごとに異なる土地の文化を感じられるのも特徴です。
台湾国際バルーンフェスタ
都市夜景、花火、冬のイルミネーション、旧正月の街並み、ランタンフェスティバル。これらは開催時期がずれているので、一年のどのタイミングで訪れても、何かしらの夜景に出会えます。しかも都市・自然・伝統行事・国家イベントとジャンルまでばらばらです。
ハヤシ百貨店
多くの日本人にとって、台湾各地に日本統治時代の建物が今も残っているというイメージは、普段あまり意識しないかもしれません。私自身、現地で取材を重ねるまでそうでした。実際に台湾を歩いてみると、当時の建築がきれいに修復され、ライトアップされて街のシンボルとして親しまれている光景に、あちこちで出会います。古い駅舎や庁舎が、当時の姿を残したまま夜の光の中に浮かび上がる様子は、知る人ぞ知る景色のまま、あまり日本には伝わっていません。
旧台中駅舎
このギャップに気づいたとき、夜景を通じて日本と台湾の架け橋になりたいと思うようになりました。台湾の夜景を伝えることは、同時に、知られていない歴史との出会いを伝えることでもあると思っています。
夜景写真家中村勇太
近くて、安心して歩けて、それでいて表情が驚くほど豊かな夜景がある。台湾を勧める理由を挙げていくと、結局はこのシンプルな事実に行き着きます。これからも取材を続けながら、台湾の夜景の魅力を少しずつお伝えしていきたいと思います。
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中村勇太
夜景写真家/夜景ジャーナリスト日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。
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日本テレビ「ZIP!」「ヒルナンデス!」、テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」「じゅん散歩」、NHK「ひるまえほっと」など
| 配信日 | 2026年07月30日 09:43 |
| 更新日 | 2026年07月31日 01:25 |
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