こんばんは!夜景写真家の中村勇太です。イルミネーションが煌めく季節が訪れました。みなさんはイルミネーションスポットに行く予定はあります?予定がない方でも普段利用する駅前や商業施設など、身近なところでイルミネーションを目にすることがあるはずです。綺麗な景色を目にすると、ポケットやカバンの中に入っているスマホを取り出しイルミネーションにカメラを向けて撮影する方も少なくないはずです。しかし、いざイルミネーションを撮ろうとすると「どう撮ればいいんだろう?」と戸惑うことはないですか?一眼レフでもスマホカメラでも、シーンに合わせた撮り方があります。今回は、スマホで簡単に試せるイルミネーション撮影テクニックを基本編から応用編までご紹介します!
はじめに、この記事を読み進めるにあたり、最初にお伝えしたいことがあります。それはご紹介する設定、機能がメーカーや機種によって異なったり、設定が存在しない場合があります。例えば、夜景を撮影するのに適したモードは機種によって「夜景撮影モード」「ナイトモード」など名称が異なります。また夜景撮影モードの機能も機種によって効果が変わる場合があります。そのため、お手持ちのスマホで再現出来ない場合は、この記事で紹介している内容は最近の傾向として理解していただき、次回スマホを購入する際の参考にしていただければと思います。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S10、ナイトモード、手持ち撮影
まずはイルミネーション撮影の基本をご紹介します。煌びやかなクリスマスツリーがある光景。みなさんならどう撮りますか?まずは「ピントを合わせる」「明るさ(露出)補正」は抑えておきましょう。このシーンでは主題であるツリーにピントを合わせます。カメラアプリ内でツリーの部分をタップするとツリーにピントが合います。タップしてピントを合わせないと、後で写真を確認したときに別の箇所にピントが置かれてしまっている可能性があります。ピンボケは後で修正が出来ないため、撮影時にしっかり合わせておきましょう。
次に明るさを意識します。ツリーにピントを合わせれば、全体的な明るさはツリーを基準に決まります。もし別の暗い場所にピントを合わせた場合はツリーは明るくなりすぎてしまいます。そのため、ツリーにピントを合わせれば基本的には明るさの調整は必要ありませんが、一度撮影して仕上がりを確認します。撮影した写真がもし暗いと感じたら明るく、明るすぎると感じたら暗く調整します。明るさの調整はピントを合わせる際にタップすると、明るさを調整するバーが表示されるので、そのバーを動かすことで明るさの調整ができます。
最近のスマホには、標準のカメラアプリに様々な撮影モードが搭載されています。イルミネーション撮影では夜景撮影モード(ナイトモード)もオススメです。夜景撮影モードの特徴は主に2つあります。1つ目はノイズの除去です。暗いシーンでの撮影は必然とISO感度という暗い箇所を明るく写す為の設定が上がるため、明るく写せるのと引き換えに、ノイズが乗りやすくなってしまいます。夜景撮影モードでは、このノイズが軽減されます。
2つ目は1回の撮影でいいとこ取りをした写真に仕上げてくれることです。これは1回シャッターボタンをタップしただけで、自動的に複数の明るさで写真を撮影し、瞬時に写真を重ねるような処理が動き、明るすぎるところが抑えめに、暗すぎるところは明るく、ベストな1枚に仕上げてくれるのです。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、通常モード、手持ち撮影
駅前にあるイルミネーションをまずは通常モードで撮影しました。綺麗に写っているように見えますが、よく見るとノイズが乗っています。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
次に夜景撮影モードで撮影しました。ちょっと分かりづらいかもしれませんがノイズが軽減されています。商業施設の壁面は左上の空の部分を見てみて下さい。ノイズが軽減出来ていることが確認できます。
スマホイルミ撮影の際に気をつけないのがレンズの汚れです。このレンズの汚れ、スマホだからこそ気をつけなければならない点です。例えば、一眼レフカメラのレンズの場合、レンズ面を触ることは想像できないかと思います。ではスマホはどうでしょうか?意図してレンズを触ることはないかと思いますが、実は知らずのうちにレンズを触ってしまっていることが多いのです。スマホは手に持つ頻度が多いですよね。意識していなくても無意識にレンズに触れてしまい、レンズが汚れていることもあります。レンズが汚れたまま撮影すると、ぼやけた写真となってしまいます。実例で見ていきましょう。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
こちらはレンズが汚れたまま撮影した写真です。大きくぼやけてしまいました。これはかなり汚れていた場合の例ですが、少し汚れた程度の場合、現場で撮影したときには気づかずに後で気づくこともあります。こういうぼやけた写真は後で修正することもできません。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
レンズを拭いて再度撮影。クリアに撮影できました。私はイルミネーションを撮影する際、頻繁にレンズを拭いています。レンズを拭く際はメガネ拭きクロスなど使うことをオススメします。
暗いシーンで使用しがちな「フラッシュ」機能。設定によっては暗いシーンだと自動的にフラッシュが有効になる場合になります。このフラッシュ機能はイルミ撮影においては基本的に使わないことをオススメします。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、通常モード、手持ち撮影
こちらはフラッシュONで撮影した写真。サンタクロースが明るく撮れましたが、全体的に不自然な印象に。ツリーの電飾の柔らかい明かりの雰囲気が失われてしまいました。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、通常モード、手持ち撮影
フラッシュOFFで撮影。見た目に近い雰囲気で撮影できました。
イルミネーション撮影の際に使えるモードは夜景撮影モードだけではありません。実はポートレートモードも活用できます。ポートレートモードは人物撮影向けのモードなので「なんでイルミでポートレートモード?」と思われた方もいるかと思います。ポートレートモードは通常、手前の人物にピントを合わせて、背景をぼかせるという特徴があります。ポートレートモードのこの特徴をイルミネーション撮影に活かすのです。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、通常モード、手持ち撮影
まずは通常モードで撮影してみます。手前のツリーにピントを合わせて撮影。奥のツリーの電球がボケて良い雰囲気に見えます。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ポートレートモード、手持ち撮影
次にポートレートモードで撮影してみます。先ほどと同じように手前のツリーにピントを合わせて撮影。すると、どうでしょう?奥のツリーの電球が大きくボケて幻想的に見えます。手前のツリーがより際立つ印象です。イルミネーション撮影の醍醐味は玉ボケの表現です。この玉ボケをうまく表現できるのがポートレートモードなんです!
雨が降っているとき何を考えますか?多くの人がネガティブに感じるのではないでしょうか?実は私は逆です。雨が降っているとき、雨が止む時間帯を調べ、この雨を撮影に活かせないか考えます。特に雨上がりは実はイルミーションの絶好の撮影チャンスなのです!
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、通常モード、手持ち撮影
雨上がりのツリー。地面が濡れているので、水たまりにイルミネーションの明かりが映り込んでいます。この映り込みがあることでイルミネーションがより煌びやかに見えるのです。ただ、このままだと写真としては面白みに欠けます。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ポートレートモード、手持ち撮影
大きく視点を変えてみます。ここではポートレートモードと映り込みを活かした撮影方法をご紹介します。まず、水たまりにスマホを近づけます。水たまりにスマホを落とさないように気をつけてください。そして、構図内の水たまりにイルミネーションが綺麗に映り込む箇所を探します。
次にポートレートモードに切り替えます。水たまりのイルミネーションにピントを合わせると、奥のイルミネーションが大きくボケます。通常、イルミネーションを鑑賞する際には見ることができない視点で写すことができ、印象をがらりと変えることができます。
カップルや友達と一緒にイルミネーションスポットに行った際に試せるテクニックもあります。スマホ1台ではなく、2台あるからこそ試せる撮り方です。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、通常モード、手持ち撮影
目の前にイルミネーションと噴水があるシーン。まずはそのまま撮ってみました。綺麗ですが誰もが撮りそうな写真で、工夫を加えたいです。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ポートレートモード、手持ち撮影
スマホが2台あると試せる撮り方です。まず1台目のスマホでカメラアプリを立ち上げて目の前のイルミネーションに向けます。さらに利き手でスマホを持ちスマホアプリを立ち上げて、1台目のスマホの画面にピントを合わせて撮ります。すると、1台目の画面にイルミネーションが写り、背後のイルミネーションが玉ボケする写真を撮ることができます。このシーンでも、ポートレートモードを使うことで背後のイルミネーションを綺麗にぼかすことができます。ポイントは、フレーム全体にイルミネーションが入るように構図を決めることです。画面の隅まで綺麗な玉ボケを敷き詰めることができます。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
並木道のイルミネーションも定番の光景。広角で撮影すると周囲の建物も映り、イルミネーションのインパクトが欠けてしまいます。この場合、望遠で撮影して圧縮効果を活かすと並木道が奥に連なる雰囲気を撮影できます。ただ、それでもありきたりな風景なのでもう少し工夫したいところ。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ポートレートモード、手持ち撮影
手前に看板を入れる構図を練りました。背景のイルミネーションを玉ボケで表現するためポートレートモードで撮影。地名が入った看板により、その場所らしい1枚が撮れました。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
商業施設で見つけたツリー。全体を撮影。これはこれで綺麗ですが、周囲のロッカーやゴミ箱が気になります。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
望遠でツリーの一部を切り取りました。構図全体に明るい被写体を入れてより煌びやかな印象に。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
商業施設のイルミネーション。観覧車と一緒に撮影。その場の雰囲気を伝える写真としてはありですが歩行者が入り煩雑な雰囲気。手持ち撮影でもイルミネーションはブレませんが、歩く人はブレます。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
特に人を入れる意図がなければ構図から外してみましょう。イルミネーションと観覧車を切り取って撮影。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
綺麗な装飾が施された窓際。漠然と撮影。全体の雰囲気は撮影できましたが、天井が赤レンガの壁と装飾とミスマッチ。
撮影設定:SAMSUNG Galaxy S22Ultra、ナイトモード、手持ち撮影
窓に近づいて、望遠で撮影。装飾と外に広がる賑やかなクリスマーケットを切り取って撮影しました。より華やかな1枚に仕上がりました。
スマホでイルミネーションを撮影するテクニックをご紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか?難しいようで意外と簡単。そして、スマホでも工夫することで様々な撮り方ができます。難しいと思って諦めていた方も、今年の冬はイルミーション撮影に挑戦してみて下さい!
ナイトモードでのスマホ撮影については、こちら も参考にしてみてください!
iPhoneのナイトモードで暗い所でもきれいに写真撮影! | にこスマ通信
今回は当記事をご覧いただきありがとうございました。私は一眼レフでの夜景の撮り方だけでなく、スマホカメラを活用した夜景の撮り方の解説、レクチャーも行っています。夜景に関するイベントを企画されている事業者様で、参加者の方にスマホでイルミネーション、夜景を撮影するテクニックをレクチャーする講師をお捜しの方はお気軽にご相談ください!
ライター名 | 夜景写真家 中村勇太 |
プロフィール | 日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。 |
ライターWebサイト |
夜景写真家 中村勇太公式サイト 夜景FAN | 夜景写真家・フォトグラファー 中村勇太 |
SNSアカウント |
配信日 | 2022年11月19日 21:13 |
更新日 | 2023年12月11日 16:41 |