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【現地レポ】江戸の庭に光と記憶が宿る夜 ―「旧芝離宮夜会 by ワントゥーテン」

【現地レポ】江戸の庭に光と記憶が宿る夜 ―「旧芝離宮夜会 by ワントゥーテン」

 旧芝離宮恩賜庭園(東京都港区)で、2026年5月20日(水)から23日(土)の4日間にわたって開催された「旧芝離宮夜会 by ワントゥーテン 〜ひかり宿る庭の記憶〜」を取材してきましたので、その様子をご紹介します。

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 JR浜松町駅の北口を出てすぐのところに位置するこの庭園は、高層ビル群に囲まれた都市の中に、江戸時代から続く池泉回遊式庭園が今も残されています。このイベントは、デジタルアートを手がけるワントゥーテンによる光と音のインスタレーションで、今年で8回目を迎えます。藤棚、雪見灯籠、枯滝の3か所でインスタレーション作品が展開されるほか、庭園全体を使ったライトアップショー「記憶あふれる刻」も実施されました。また今年は、これまで夜間には立ち入ることのできなかった庭園中央の「中島」を回遊できる人数限定観賞ツアーが新たに設けられました。

藤棚「藤棚の情景」

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 園内に入ってまず目に入るのが、藤棚エリアのインスタレーション「藤棚の情景」です。藤棚の下には格子状の演出幕が設けられ、紫の光の中に揺れる藤の花影が静かに浮かび上がります。夜会の入口となる演出として、来場者を夜の庭へと導く役割を担っていました。

 季節的には藤の花期を過ぎていましたが、映像によって再現された花影は、むしろ実物の藤よりも静かで、どこか夢の中の情景のような印象を与えます。幕を通して見る格子の影と光のグラデーションが、江戸の庭という舞台とよく調和していました。

庭に点在する、和傘の灯り

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 庭園内の芝生エリアには、赤・ピンク・緑など色とりどりの和傘が点在していました。内側から光を放つ和傘は、夜の芝生の上でそれぞれ柔らかく輝き、池の水面にその色を映し込んでいます。

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 遠目に見ると、ライトアップされた松の足元に色とりどりの和傘が点在する光景は、どこか絵画の中の情景を見るようでした。

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 一方で近づいて見ると、傘の骨組みと光の透け感に繊細さがあり、見る距離によって異なる表情を楽しめます。背景の高層ビル群との対比も、この庭園ならではの景色でした。

雪見灯籠「海際の情景」

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 州浜のほとりに立つ雪見灯籠を中心としたインスタレーション「海際の情景」は、旧芝離宮の歴史的背景を踏まえた演出です。この庭園はかつて、江戸時代に東京湾の海水を引き込んで造られた「潮入の庭」でした。干満によって水位が変化し、海とつながっていた池が、今は周囲のビル群に囲まれた淡水の池として残っています。

 優しい光が水面を静かに照らし、かつての潮の満ち引きを思わせるような揺らぎを演出していました。灯籠の重厚な石の質感と、光の柔らかさのバランスが印象的で、池越しに眺める景色は、庭園の内と外、江戸と現代が重なり合うような不思議な感覚を与えてくれました。

枯滝「石組の情景」

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 散策路の奥に位置する枯滝の石組には、光が水の流れを模するように投影されていました。光がまるで石の上を伝うように動き、実際には水が流れていない枯滝に、幻の水の気配を与えています。

 石組の量感と細部の陰影が光によって際立ち、普段の昼間とはまったく異なる表情を見せていました。江戸時代の庭師がこの石組に込めた意図が、光という現代の手段によって改めて浮かび上がってくるような感覚がありました。

人数限定「中島」観賞ツアー

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 今年新たに設けられた「中島」観賞ツアーは、各回10名限定・先着順で受け付けられたプログラムです。ガイドの案内に従い、普段は立ち入ることのできない池の中央部の島「中島」を歩いて回遊します。

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 ツアーでは、大久保忠朝の家紋が入った折りたたみ式の提灯「小田原提灯」を持ったスタッフが先導してくれました。江戸時代に東海道を行き来する人々が懐に入れて携帯したというこの提灯は、現在は職人がほとんど残っておらず、このイベントのために特別に作られたものだということです。

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 中島は、霊山・蓬莱山を模した石組が特徴的な場所で、ガイドによるとこの景色は江戸時代からほとんど変わっていないとのことでした。池の中心から庭園を眺めると、ライトアップされた松や石組が水面に映り込み、背景には浜松町の高層ビル群の夜景が広がります。ツアー参加者だけが体験できる、庭園の中心からの特別な眺めでした。

 足元にはゴツゴツとした岩もあるため、参加にあたってはスニーカーなど滑りにくい靴が推奨されています。

取材を終えて

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 高層ビルに囲まれた旧芝離宮恩賜庭園は、昼間に訪れても都会の喧騒の中に静かな別世界が広がる場所です。夜になり、光と音の演出が加わることで、その対比はさらに鮮明になりました。江戸時代の庭師が丁寧に積み上げた石組に光が当たる瞬間、それが現代のデジタルアートの手によるものだとわかっていても、その庭の記憶を確かに感じ取れるような体験でした。

 共催団体のひとつ、一般社団法人竹芝エリアマネジメントの担当者は「浜松町で働くオフィスワーカーの方が帰り道にここを通っても、すでに閉園してしまっているんです。夜間に特別開園することで、この庭園の魅力を多くの方に知っていただきたい」と話してくれました。なお、浜松町駅では北口の橋上駅舎化と東西自由通路の整備工事が進んでおり、完成すれば周辺エリアへのアクセスがさらに向上する見込みです。

 「旧芝離宮夜会」の開催は23日(土)まで。光の中に江戸の記憶が宿るこの夜を、ぜひ現地で体験してみてください。

イベント概要

イベント名 旧芝離宮夜会 by ワントゥーテン 〜ひかり宿る庭の記憶〜
会場 旧芝離宮恩賜庭園(東京都港区海岸1-4-1)
開催期間 2026年5月20日(水)〜5月23日(土)
ライトアップ時間 18:30〜21:30(最終入場21:00)
料金 前売券1,000円/当日券1,200円(税込)、小学生以下無料
主催 公益財団法人東京都公園協会
公式サイト https://yakai.1-10.com/shibarikyu/
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ライター情報

中村勇太

中村勇太

夜景写真家/夜景ジャーナリスト

日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。

対応可能な仕事

夜景撮影、執筆、解説・ガイド、講師、イベントの企画・監修

出演番組

日本テレビ「ZIP!」「ヒルナンデス!」、テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」「じゅん散歩」、NHK「ひるまえほっと」など

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配信情報

配信日 2026年05月22日 09:15
更新日 2026年05月22日 10:23

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