夜景撮影といえば「カメラも三脚も触れない」のが鉄則——そんな常識を覆す撮影技法が「露光間ズーム」です。シャッターを開けている最中にズームリングを操作するだけで、点光源が放射状に広がるドラマチックな光跡が生まれます。本記事では、露光間ズームの仕組みから機材・設定・操作のコツ・応用表現まで、実践的な内容を徹底解説します。
露光間ズームを活用した夜景写真
露光中にズームリングを操作することで、光が放射状に流れる写真表現です。街灯・イルミネーション・ビルの窓など、夜景に溢れる点光源が中心から外側へ線状に広がり、1枚の写真に躍動感と奥行きが生まれます。特別な機材は不要で、ズームレンズと三脚があれば今すぐ挑戦できる技法です。
露光間ピントずらしの作例
混同されやすい技法に「露光間ピントずらし」があります。こちらはズームリングではなくフォーカスリングを操作する技法で、光源が玉ボケとなって大きく広がり、夜景全体が幻想的な印象に変わります。
露光間ズームの作例
操作するリングはズームが「ズームリング」、ピントずらしが「フォーカスリング」。効果はズームが「光が線状に放射状へ流れる」、ピントずらしが「光がふわっと広がるボケ感」。印象はズームが「躍動感・ダイナミック」、ピントずらしが「幻想的・柔らか」です。どちらが正解ではなく、伝えたい世界観で使い分けましょう。
三脚(必須)
露光中にカメラが少しでも動くと、ズームによる光跡とは別の不規則なブレが発生します。しっかりした三脚で完全に固定することが、露光間ズーム成功の絶対条件です。
リモートレリーズ(あると便利)
手でシャッターを押す際の振動を防ぎます。セルフタイマー(2秒)で代用もできますが、ズーム操作のタイミング調整が難しいため、リモートレリーズがあると格段に操作しやすくなります。
NDフィルター(あると便利)
明るい夜景や日没直後でシャッタースピードを長くしたい場合に使用します。ND4〜ND8が実用的です。
露光間ズームは一眼カメラ専用の技法です。ズームリングを手動で操作できるズームレンズが必要なため、電動ズームや単焦点レンズは不可。スマートフォンやコンデジでは基本的に難しい撮影です。
SS5秒、F11、ISO100 ワイド4秒→テレ側に1秒ズーム
露光中にズームリングを操作することで、光が主題から放射状に広がります。主題がくっきり写ることで存在感が増し、夜景の躍動感も同時に表現できます。
SS4秒、F16、ISO100 ワイド2秒→テレ側に2秒ズーム
光線が一点に向かって流れ込む効果で、見る人の視線を自然に奥へ誘導します。道や通路など奥行きのある場所で特に効果的な表現です。
露光間ズームの仕上がりを左右するのは「どちら方向にズームするか」ではなく、「どちら側で固定露光するか」です。
SS5秒、F16、ISO100 ワイド3秒→テレ側に2秒ズーム
ワイド側で3秒固定露光したあと、テレ側へズーム操作します。広い画角でピントが合うため、観覧車と周囲の夜景が広く写り込みます。その後のズームで光跡が加わります。
SS5秒、F16、ISO100 テレ3秒→ワイド側に2秒ズーム
テレ側で3秒固定露光したあと、ワイド側へズーム操作します。テレ側でピントが合うため、観覧車がメインとなり、周囲の夜景より観覧車の存在感が際立ちます。その後のズームで光跡が加わります。
撮る前に「何をメインに見せたいか」を決め、固定する側を選ぶことが大切です。
サムネイルをタップして拡大表示。設定値の違いによる光跡の変化を比較できます。
サムネイルをタップして切り替え
24mm→35mmは控えめで繊細な光跡、24mm→50mmは標準的、24mm→70mmは力強い、24mm→105mmは迫力のある放射状の光跡になります。表現したい光跡の強さに合わせてズーム幅を選びましょう。
サムネイルをタップして拡大表示。設定値の違いによる光跡の変化を比較できます。
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露光中常にズームすると光跡が力強く広がり、夜景の細部より光の動きが主役になります。固定3秒+ズーム3秒では夜景の写り込みと光跡の広がりが両立します。固定5秒+ズーム1秒では夜景がしっかり写り込み、光跡がアクセントになります。
SS10秒 ワイドからテレに4回止めながらズーム
SS8秒 ワイドからテレに4回止めながらズーム
ズーム操作の途中で一時停止することで、止めた瞬間の被写体がくっきりと写ります。光跡の流れと止まった主役が共存し、露光間ズームだけで生まれる独特の表現です。
スライダーを左右にドラッグして撮影前後の違いを確認できます。
スライダーをドラッグして比較
ネオン看板やロゴなどを被写体にすると、露光間ズームで文字が飛び出すような効果が生まれます。ポイントは飛び出させたい文字がワイド側とテレ側で位置がかぶらないようにすることです。文字・ロゴがワイド側とテレ側で位置が同じ場合、重なりワイド側の文字がつぶれてしまいます。
サムネイルをタップして拡大表示。設定値の違いによる光跡の変化を比較できます。
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点光源が画面全体に広がる構図を選ぶことが大切です。光源が画面中央に集中していると上下に光跡が届かず余白が生まれてしまいます。ビルの窓明かり・観覧車・イルミネーションなど、光源が広範囲に広がる場所や構図を意識しましょう。
ズームリングを回す際にカメラをブラしてしまい線が歪んでしまった例
ズームリング操作中に手がぶれると、光跡の線が波打って歪んでしまいます。シャッターを切る前に何度か素振りで練習し、スムーズに一定速度で回せるようにしておきましょう。
主題を先に決める ― 観覧車・ロゴなど「何を目立たせたいか」を決めてから構図を作る
固定側を意識する ― テレかワイドか、くっきり写したい側で固定露光する
ズーム幅で光跡の強さを調整する ― 24→35mmは控えめ、24→105mmは迫力重視
固定時間とズーム時間の配分を意識する ― 固定が長いほど夜景くっきり、ズームが長いほど光跡が強調
ズームは滑らかに一定速度で ― 素振りで操作に慣れてからシャッターを切る
露光間ズームは、失敗しながら繰り返すことで感覚がつかめる技法です。同じ場所・同じ被写体で設定を少しずつ変えながら撮ることが上達の近道です。ぜひ今夜の夜景撮影で試してみてください。
中村勇太
夜景写真家/夜景ジャーナリスト日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。
夜景撮影、執筆、解説・ガイド、講師、イベントの企画・監修
日本テレビ「ZIP!」「ヒルナンデス!」、テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」「じゅん散歩」、NHK「ひるまえほっと」など
| 配信日 | 2026年05月16日 01:20 |
| 更新日 | 2026年05月16日 06:51 |
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