夜景を撮影するとき、目の前の景色をそのまま写すだけでなく、周囲にある建物や木々などを取り入れることで、写真の印象を大きく変えることができます。そのような撮影方法の一つが「額縁構図」です。
額縁構図は、主役となる被写体の周囲に建物や窓、木々などを配置し、写真の中に「枠」をつくる構図です。視線を自然と主役へ導き、被写体を印象的に見せるとともに、写真に奥行きや立体感を生み出す効果があります。
今回は、夜景写真家の中村勇太が、実際に撮影した写真を例に、額縁構図の基本から8つの実践テクニック、失敗しやすいポイントまで解説します。デジタル一眼カメラはもちろん、スマートフォンでの夜景撮影にも活用できるテクニックです。
台湾・聖徳宮の額縁構図
額縁構図とは、写真の主役となる被写体を、周囲の建物や木々などで囲む構図のことです。絵画を額縁に入れて飾るように、主役の周囲に枠をつくることで、見る人の視線を自然と中央の被写体へ導くことができます。
額縁というと四角い形を想像するかもしれませんが、必ずしも四方を完全に囲む必要はありません。丸や三角形の隙間を利用したり、画面の上や左右の一部分だけを囲んだりする方法もあります。
夜景撮影では、建物の柱や屋根、窓枠、街路樹など、身近にあるものを額縁として活用できます。普段見慣れた夜景でも、周囲にあるものを取り入れるだけで、いつもとは違った印象の写真に仕上げることができます。
同じ被写体でも、額縁構図を取り入れることで写真の印象は大きく変わります。下の写真は、横浜・みなとみらいの建物を異なる構図で撮影したものです。スライダーを左右に動かして、構図の違いを比較してみてください。
BEFORE
AFTER
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▲ スライダーを左右に動かして構図の違いを比較できます
Beforeの写真は、建物や観覧車など、周囲の夜景を広く写した構図です。景色の全体像は伝わりますが、画面のさまざまな部分に視線が向きやすくなります。
一方、Afterの写真では、木々の間から建物を見せることで、自然と視線が主役へ向かい、写真に奥行きも生まれています。
撮影場所を大きく変えなくても、周囲にある木々などを利用することで、同じ被写体を違った印象で表現できます。
ここからは、実際の夜景写真を例に、額縁構図を使った8つの撮影テクニックを紹介します。街中の建物や構造物だけでなく、自然物や前ボケなど、さまざまなものを額縁として利用できます。
建物の柱と天井で横浜ランドマークタワーを囲んだ作例
まずは、建物や構造物の形を利用して、主役となる被写体を囲む方法です。
柱や壁、天井などを画面に取り入れることで、自然な額縁が生まれ、視線を主役へ導くことができます。
この作例では、建物の柱と天井を使って横浜ランドマークタワーを囲んでいます。手前の建築物を構図に取り入れることで、ランドマークタワーを引き立てながら、建物のスケール感も表現しています。
額縁構図を初めて試す場合は、まず四角く囲める場所を探してみましょう。柱と天井、左右の壁など、街中には額縁として利用できる場所が数多くあります。
台湾・台北市の龍山寺 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/25mm/F4/1/100秒/ISO 200
建物の内側から外側を眺め、柱や屋根などを額縁として利用する方法です。
外側の景色を切り取るように構成することで、主役が強調されるとともに、写真に奥行きや、その場所から景色を眺めているような臨場感が生まれます。
この作例は、台湾・台北市の龍山寺で撮影した写真です。手前の暗い建物を額縁として使い、奥にある明るく照らされた寺廟へ自然と視線が向かうように構成しています。
建物の外観を正面から撮影するだけでなく、建物の内側から外を眺めてみると、新しい構図が見つかることがあります。
救命浮環の中央に建物を配置した作例 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/30mm/F2.8/1/40秒/ISO 1000
額縁構図は、四角い形だけではありません。街中にある丸い形も、額縁として活用できます。
モニュメントやオブジェ、柵などにある丸い穴を利用し、その内側に主役を配置することで、視線を中央の被写体へ集めることができます。
この作例では、救命浮環の中央に建物を配置しています。手前の丸い形が額縁となり、その奥にある建物が自然と目に入る構図です。
丸い額縁を見つけたら、立ち位置を少しずつ変えてみましょう。わずかな移動でも、丸い枠の中に入る景色は大きく変わります。主役がきれいに収まる位置を探すことがポイントです。
三角形の構造物の中に船を配置した作例 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/35mm/F2.8/1/25秒/ISO 1000
柱や梁、構造物などがつくる三角形の隙間も、額縁として利用できます。
三角形は視線を内側へ導きやすく、その先に主役を配置することで、被写体を印象的に見せることができます。
この作例では、手前の構造物がつくる三角形の中に船を配置しています。三角形の隙間を利用することで、船が写真の主役として引き立つ構図になっています。
三角形を見つけたら、立ち位置やカメラの高さを変えながら、主役がきれいに収まる位置を探しましょう。少ししゃがんだり、左右に移動したりするだけでも、構図は変化します。
屋根と柱でみなとみらいの夜景を切り取った作例 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/35mm/F4/1/50秒/ISO 1600
額縁構図というと、被写体の周囲を完全に囲む必要があると思われがちですが、必ずしもそうではありません。
画面の上や左右など、一部分に前景を入れるだけでも、視線を主役へ導き、写真に奥行きをつくることができます。
この作例では、屋根と柱を画面の上と左右に配置し、横浜・みなとみらいの夜景を切り取っています。四方を完全に囲まなくても、周囲の構造物が額縁として機能しています。
大切なのは、額縁で囲むこと自体ではなく、主役となる夜景をどう見せるかです。無理に四角い枠をつくろうとせず、周囲にあるものを自然に取り入れてみましょう。
桜で東京スカイツリーを囲んだ作例 撮影データ:iPhone 14 Pro/35mm換算24mm/F1.8/1/25秒/ISO 640
建物や構造物だけでなく、木々や花などの自然物も額縁として活用できます。
枝葉や花を画面の周囲に配置することで、人工物とは違った柔らかな印象を加えながら、視線を主役へ導くことができます。
この作例では、桜を前景として東京スカイツリーを囲んでいます。桜の花を構図に取り入れることで、東京スカイツリーの夜景に奥行きと季節感を加えています。
春には桜、秋には紅葉、初夏には新緑など、季節によって利用できる自然物も変わります。同じ夜景スポットでも、季節ごとに異なる額縁構図を楽しめるのが魅力です。
窓枠の中に観覧車を配置した作例 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/35mm/F2.8/1/20秒/ISO 800
窓や格子も、そのまま額縁として利用できます。
窓枠の中に主役を配置することで、景色の一部分を切り取り、視線を自然に主役へ集めることができます。
この作例では、複数の窓枠の中から観覧車が見える位置を選んで撮影しています。どの窓枠に何を入れるかを意識することで、主役が明確になります。
展望施設や建物の中で夜景を撮影するときは、窓の外に広がる景色だけでなく、窓枠そのものにも注目してみましょう。窓の形や配置を生かすことで、印象的な写真を撮影できます。
前景をぼかして明るい路地を見せた作例 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/35mm/F4/1/40秒/ISO 3200
手前にあるものをぼかし、額縁として使う方法もあります。
柵や植栽、壁などに近づいて撮影すると、前景が大きくぼけ、その隙間から主役を見せる構図をつくることができます。
この作例では、手前の構造物を大きくぼかし、奥にある明るい路地へ視線が向かうように構成しています。
前ボケを入れることで写真に奥行きが生まれ、隙間から景色を覗き込んでいるような印象も表現できます。
撮影するときは、手前のものに近づき、奥の主役にピントを合わせてみましょう。前景と主役の距離を意識することで、ボケを生かした額縁構図をつくりやすくなります。
額縁の中に傘を差した人物を配置した作例 撮影データ:Canon EOS R6 Mark II/24mm/F2.8/1/40秒/ISO 800
額縁構図は、建物や夜景だけでなく、人物を主役にする場合にも活用できます。
額縁の中に人物を配置すると、風景に物語性を加えることができます。人物そのものを大きく写さなくても、シルエットとして入れるだけで、見る人の視線を自然に引きつけることができます。
この作例では、暗い額縁の中に傘を差した人物を配置しています。明るい場所に人物が入る瞬間を待って撮影することで、人物の存在がより印象的になっています。
人物を取り入れるときは、立つ位置や歩く方向にも注目しましょう。構図を決めてから人物が通るタイミングを待つことで、街の雰囲気や物語を感じさせる写真を狙うことができます。
額縁構図は、撮影時の工夫だけでなく、撮影後の現像によっても効果を高めることができます。
例えば、額縁となる周囲の部分を少し暗くすることで、中央の被写体との明暗差が生まれ、自然と主役へ視線を集めることができます。
下の写真は、周囲の明るさを調整したBefore/Afterの比較です。スライダーを左右に動かして、仕上がりの違いを確認してみてください。
BEFORE
AFTER
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▲ スライダーを左右に動かして比較できます
Beforeの写真では、周囲の建物が比較的明るく写っているため、主役以外にも視線が向きやすくなっています。一方、Afterの写真では、周囲の明るさを落とすことで、中央の被写体がより引き立っています。
現像ソフトを使う場合は、周囲の露出を調整し、主役との明暗差を意識してみましょう。額縁となる部分を暗くすることで、写真全体の印象を変えることができます。
額縁部分が明るすぎるNG作例
額縁構図で気をつけたいのが、額縁そのものが目立ちすぎてしまうことです。
額縁として使う部分が明るすぎると、主役よりも周囲の構造物に視線が向いてしまいます。せっかく額縁構図を取り入れても、主役が目立たなくなってしまうことがあります。
この作例では、左右の構造物が明るく写りすぎているため、中央の夜景への視線が分散しています。
このような場合は、撮影時の露出や立ち位置を調整し、額縁部分が目立ちすぎないように工夫しましょう。また、撮影後の現像で額縁部分の明るさを抑える方法も有効です。
額縁構図は、周囲を囲むことが目的ではありません。あくまで主役を引き立てるための構図であることを意識しましょう。
額縁構図は、建物や窓枠、木々など、周囲にあるものを利用して主役を引き立てる撮影テクニックです。
四角い形だけでなく、丸や三角形の隙間を利用したり、画面の一部分だけを囲んだりする方法もあります。また、額縁の中に人物を配置したり、現像で周囲の明るさを調整したりすることで、表現の幅をさらに広げることができます。
撮影するときは、まず何を主役として見せたいのかを考えてみましょう。そして、周囲にある柱や窓、木々などに目を向け、主役が最も引き立つ位置を探してみてください。
普段撮影している夜景スポットでも、少し視点を変えるだけで、新しい構図を見つけられるはずです。
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中村勇太
夜景写真家/夜景ジャーナリスト日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。
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| 配信日 | 2026年10月25日 17:12 |
| 更新日 | 2026年10月25日 20:10 |
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