夜景を撮ると、「綺麗なはずなのに、なぜかしっくりこない」と感じることがあります。その差を生む大きな要素のひとつが構図です。
夜景は、光の点や線、明暗、色の重なりによって成り立っています。それらをどこで切り取り、何を主役にするかによって、写真の印象は大きく変わります。構図を意識することで、何気ない夜の風景でも、肉眼では気づかなかった美しさが引き立ちます。
印象的な夜景写真を撮るためには、カメラ設定だけでなく、被写体をどう配置し、視線をどう導くかが重要です。今回は、夜景撮影と相性の良い構図を中心に、それぞれの特徴や効果を紹介します。
▲マジックアワーに撮影した工場プラントと富士山
三分割構図とは、画面を縦方向・横方向にそれぞれ三等分して考える構図です。このとき、縦線と横線が交差する位置を「交点」と呼びます。
この作例では横方向の三分割を意識し、「空・地上(建物)・海」を1:1:1のバランスで配置しています。
▲東京都心のビルから撮影したマジックアワーの夜景
都心のビルから俯瞰する夜景を、マジックアワーを狙って撮影しました。横方向の三分割を意識し、「空・街」を1:2のバランスで配置しています。さらに交点に富士山と東京タワーを配置することで、視線の安定とバランスを生み出しています。
▲湘南国際村から撮影したマジックアワーの夜景
高台の展望公園からの作例でも横方向の三分割を意識し、「空・街と海」を1:2の比率で配置。交点に富士山を置くことで主題が自然に引き立ちます。
▲湘南キャンドルで撮影した作品
江の島で行われたライトアップイベントを三分割構図で撮影しました。画面を縦方向に三等分し、主役のランタンを左側に配置。背景に広がるランタンの光を残すことで、奥行き表現しています。主題と背景の関係を整理することで、主題の存在感を際立たせます。
▲基隆・正濱漁港のカラフルな建物
二分割構図を用いた夜景の作例です。上下に二等分し、上部に建物の灯り、下部に水面へ映り込む光を配置しました。波が緩やかなほど、水面に美しく映り込みます。
▲アートアクアリウム 美術館の水槽
日本国旗に似ていることから、日の丸構図と呼ばれています。単調になりやすい構図として紹介されることもありますが、主題を中央に大胆に配置するため、インパクトがあります。主題の存在感が大きいため、主題に何を選ぶか、センスも問われます。
▲恵比寿ガーデンプレイスのクリスマスツリー
三角構図は、被写体が三角形になるように配置する構図です。この作例は、恵比寿のイルミネーションスポットで撮影しました。多くの人で賑わっていましたが、要素をシンプルに整理し、ツリーそのものの形が際立つよう構成しています。シンプルな被写体ほど、配置のバランスが重要になり、左右・上下ともに均等感を意識してまとめました。
▲東京スカイツリータウンのイルミネーション
東京スカイツリータウンにて撮影。東京スカイツリーを主題に、麓から広角レンズで見上げるように構図を組むことで、上へ向かってすぼまり、三角形の形が強調されます。縦方向のラインを意識した三角構図は、建物の高さやスケール感を際立たせたい場面で効果的です。
▲川崎市役所の展望台
川崎の展望台にて、展望空間の雰囲気を活かしながら夜景を撮影しました。対角線構図とは、フレーム内に対角線となるラインを意識的に配置し、その延長上に被写体を置く構図です。本作例では、展望台のライティングを対角線上に取り入れることで、ラインの伸びと奥行きを強調しています。視線を自然に奥へ導けるのが特徴です。
▲横浜赤レンガ倉庫のテラスから撮影した夜景
横浜赤レンガ倉庫のテラスから、イルミネーションを見渡す夜景を撮影しました。手前の手すりをフレーム内に対角線として配置することで、視線が自然に奥へと導かれ、画面に奥行きが生まれます。さらに、対角線を境界として「賑やかな光のエリア」と「落ち着いた暗部」を分けることでコントラストが強まり、街の活気や華やかさをより印象的に表現できます。
▲豊洲市場屋上
被写体を中心線で左右、または上下に均等に配置するのがシンメトリー構図です。構造物や通路、水面の反射などと相性が良く、安定感と美しさを同時に演出できます。中心を正確に捉えることで、夜景の直線や光が際立ち、洗練された印象の一枚に仕上がります。
▲北とぴあの展望台から俯瞰する夜景
▲台湾・苗栗の高台から俯瞰する夜景
道路や川、光の流れなどの曲線をS字状に配置するのがS字構図です。視線が自然に画面奥へ導かれ、夜景に奥行きとリズムが生まれます。高所から街を俯瞰する夜景と相性の良い構図です。
▲梅田スカイビル・空中庭園展望台のエスカレーター
放射状構図は、道路や建物など構造物のラインなどが一点に集まる、またはそこから広がる構図です。ラインが収束点へ導くことで、強い奥行きと臨場感を表現できます。ポイントは必ず収束点を画面内に入れることと、その位置を意識的に決めること。中心に限らず、三分割構図の交点に配置するとバランスが取りやすい。
▲静岡・富士の紫陽花ぼうる
円形の被写体を撮影する際に、被写体の左右どちらかをあえてフレームから外し、C字を描くように配置する構図を「C字構図」といいます。全体を写すのではなく、クローズアップして撮影することで、被写体をより大きく見せ、存在感や被写体の美しさを強調できます。中央配置では単調になりやすい被写体も、構図に変化を加えることで印象的な一枚に仕上げることができます。
▲新北・聖徳宮の夜景
窓や建物の開口部などを利用してフレームを作り、その内側に風景を収める構図を「額縁構図」といいます。手前の枠を活かすことで視線が自然と奥の被写体へ導かれ、印象が引き締まります。夜景では奥の景色に露出を合わせ、枠をシルエット気味にすると、主役が際立ち重厚感のある一枚に仕上がります。
▲静岡・富士の花手水
▲大阪・関西万博の「TECH WORLD」に展示された半導体アート
パターン構図は、同じ形や色、光が規則的に並ぶ要素を画面いっぱいに配置する構図です。夜景では、ビルの窓明かりなどが好例で、繰り返しがリズム感や心地よさを生み出します。四隅まで乱れがないかを意識し、不要な要素は大胆に切り取ることで、造形の面白さと光の美しさが際立ちます。
▲Canon EOSR6 Mark2の画面
夜景撮影では構図の理解だけでなく、「構図を決めやすい環境」を整えることも重要です。多くのカメラにはグリッド表示機能が搭載されており、9分割線を表示させることで三分割構図や水平・垂直の確認がしやすくなります。特に夜景は暗さによって水平感覚が狂いやすく、わずかな傾きでも違和感が生まれやすいため、グリッドを活用することで安定した構図づくりにつながります。また、対角線を意識したい場合は、9分割線に加えて対角線表示を併用することで、視線の流れや奥行きの方向をより明確に把握できます。
▲Adobe Lightroomの画面
構図は後処理で整えるものではなく、撮影時にしっかり考えて組み立てることが基本です。ただし、撮影後の仕上げ段階での微調整も有効です。RAW現像ソフトでは三分割や対角線、黄金比などのガイドラインを表示しながらトリミングできるため、わずかな傾きの補正や不要な要素の整理を行い、完成度を高めることができます。
その際は構図を詰めすぎず、少し余裕を持って広めに撮影しておくことがポイントです。余白を残すことでトリミングの自由度が生まれ、水平補正やバランス調整にも柔軟に対応できます。構図は現場で決め、ソフトは仕上げを整えるための補助として活用する。この意識を持つことで、再現性の高い夜景作品へと仕上げることができます。
夜景撮影において構図は、単に見た目を整えるためのものではなく、「何を主役にするのか」「どの光を活かすのか」を明確にするための重要な要素です。夜景は光の量が多く、一見華やかに見える一方で、整理せずに撮影すると視線が散り、印象の弱い写真になりがちです。三分割構図でバランスを整える、対角線やS字構図で視線を導く、シンメトリーや日の丸構図で主題の存在感を強調するなど、構図を意識することで同じ場所でも写真の完成度は大きく変わります。
また、すべての構図を使い分けようとする必要はなく、まずは「何を見せたいのか」を決めることが最も重要です。主題が明確になれば、自然と適した構図も見えてきます。さらに、夜景では前景・中景・遠景の関係を意識することで奥行きが生まれ、作品としての完成度が高まります。構図は知識として覚えるだけでなく、実際に撮影しながら試行錯誤することで身につきます。ぜひさまざまな構図を試し、自分らしい夜景表現を見つけてみてください。
| ライター名 | 夜景写真家 中村勇太 |
| プロフィール | 日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。 |
| ライターWebサイト |
夜景写真家 中村勇太公式サイト 夜景FAN | 夜景写真家・フォトグラファー 中村勇太 |
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| 配信日 | 2026年02月25日 13:40 |
| 更新日 | 2026年02月25日 14:13 |
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