こんばんは!夜景写真家中村勇太です。今回ご紹介するのは初夏の風物詩「ホタル」撮影のお話です。ホタルの見頃は地域により差がありますが、6月を中心に観賞できます。闇に浮かぶ幻想的なホタルの明かりを眺めるのも良いですが、スマホで写真に残して友人に共有したり、Instagram等のSNSに投稿したくなりますよね。そこで多くの方がある悩みに直面します。それは「ホタルをスマホのカメラでどんなに撮影してもうまく撮れない」。こんな経験ないでしょうか?光量の多い都市夜景とは真逆で、微弱な明かりのホタルは確かにイメージセンサーの小さいスマホカメラでは得意なシーンとは言えません。ただ、最近のスマホは暗いシーンでも明るく、ノイズも少ない写真を撮れる機種が増えてきました。また、マニュアルモードを活用することで、ホタルの光を光跡で表現することもできます。今回は、iPhoneとAndroidで活用できるホタル撮影テクニックをご紹介します!
▲iPhone 14 Pro、標準カメラアプリ、ナイトモード、手持ち撮影
ホタルが舞う観賞スポットにやってきました。構図を考えていると、丁度目の前の葉の上にホタルが羽を下ろしました。真っ暗な中、ホタルが柔らかな明かりを放ちます。iPhone 14 Proのカメラアプリを起動。このようなシーンでは自動的にナイトモードに切り替わります。ナイトモードで撮影するとこの通り、ホタルと周囲の葉を明るく撮影できます。
▲iPhone 14 Pro、標準カメラアプリ、通常モード、手持ち撮影
ナイトモードをOFFにして撮影した写真がこちら。暗闇の中にホタルの明かりがポツリと灯る様子を撮影できました。みなさんはどちらの写真が好みですか?私は見た目に近い雰囲気のこちらの写真の方が好みです。ホタル撮影に関わらず、夜景撮影のシーンによってはナイトモードをOFFの方が適するシーンもあるので、必要に応じて使い分けましょう。
▲Galaxy S22 Ultra、標準カメラアプリ、通常モード、手持ち撮影
目の前で舞うホタルを撮影。暗闇に浮かぶホタルの明かりが写りましたが、暗部が多く作品としてはもう少し工夫をしたいところ。
▲iPhone 14 Pro、標準カメラアプリ、ナイトモード、手持ち撮影
ここではナイトモードに切り替え。手前にあじさいが咲いていたので、あじさいとホタルをセットで狙います。あじさいにピントを合わせ撮影。ナイトモードで撮影したことにより、真っ暗なシーンでも明るく撮影できました。また、ホタルの明かりを大きく見せるにはホタルにピントを合わせるよりも、ピントをずらしが方がホタルの光源がボケるので大きく写せます。手前のあじさいにピントを合わせているので、奥のホタルの明かりを玉ボケとして表現できました。
▲Galaxy S22 Ultra、標準カメラアプリ、プロモード、ISO200、シャッタースピード30秒、三脚利用
ホタル撮影の定番と言えば、長時間露光でホタルの光を光跡で表現する撮り方ではないでしょうか。ホタルの種類により光り方が異なり、ゲンジボタルなら光跡が線に、ヒメボタルなら光跡が点となります。撮り方は一眼カメラと同様、三脚に固定して長時間露光で撮影します。iPhoneの標準カメラアプリにはシャッタースピードを設定できるマニュアルモード等がないので、AdobeのLightroomアプリ等を使用しましょう。難しいのはホタルが舞うタイミングは不定期であり、なかなか構図内にバランス良くホタルの光跡を描けないことです。そこで活用するのが「比較明合成」です。比較明合成をすることで、ホタルの光跡を撮影した複数の写真を1枚にまとめることができます。
▲Galaxy S22 Ultra、標準カメラアプリ、プロモード、ISO400、シャッタースピード30秒、三脚利用
撮影のコツは完全に暗くなりきる前に構図を決めておくことです。そして、ベースとなる写真は真っ暗ではなく、明るめに撮影しておきます。このベースとなる写真にホタルの光跡を組み合わせるイメージです。ホタルの光跡の写真はホタルの明かりがしっかり写せていれば全体的に暗めでも構いません。ベースとなる写真、ホタルの光跡の写真はすべて構図をずらさないように注意してください。撮影中に構図をずらしてしまうと、合成に失敗します。
合成ソフトはいくつかありますが、今回はAdobeのPhotoshopを使用しました。Photoshopを起動してメニューバーから「ファイル」→「スクリプト」→「ファイルをレイヤーとして読み込み」をクリックします。
「レイヤーを読み込む」ウィンドウが表示されるので「参照」をクリックして、ベースとなる写真も含め、合成するすべての写真を選択して、「OK」をクリックします。
しばらく待つと選択した写真がレイヤーに並びます。レイヤーですべての写真を選択して「比較(明)」を選択します。すると、選択した写真で比較明合成が行われます。最後に、写真を書き出しすれば作業は完了。
▲Galaxy S22 Ultra、標準カメラアプリ、プロモード、Photoshopで比較明合成
40枚程撮影した写真をPhotoshopで比較明合成した写真がこちら。1枚では収まりきらなかったホタルの光跡をギュッと詰め込みました。
ここまで、スマホによるホタルの撮影のコツをご紹介してきましたが、最後に撮影時の注意点を4つお伝えします。1つ目は余計な光を出さないことです。カメラのフラッシュはホタル撮影では不要であるのはもちろん、他の撮影者の邪魔になる他、ホタルにも負担がかかります。2つ目は虫除けスプレーを使わないことです。光同様、虫除けスプレーもホタルに負担がかかります。3つ目はホタルに増えないこと。当たり前ですが持ち帰りも厳禁です。4つ目は不用意に茂みに入らないことです。マナーを守り、ホタルの生息地を守りながら観賞や撮影を楽しみましょう。
ライター名 | 夜景写真家 中村勇太 |
プロフィール | 日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。 |
ライターWebサイト |
夜景写真家 中村勇太公式サイト 夜景FAN | 夜景写真家・フォトグラファー 中村勇太 |
SNSアカウント |
配信日 | 2024年06月11日 18:20 |
更新日 | 2024年06月11日 19:45 |