こんばんは!夜景写真家の中村勇太です。みなさん「日本三大夜景」をご存じですか?夜景に詳しくない方でも一度は聞いたことがある方が多いのではないでしょうか?日本三大夜景とは、北海道函館市の函館山、兵庫県神戸市の摩耶山、長崎県長崎市の稲佐山の3スポットを指します。日本ではかねてから日本三大都市や日本三景、三種の神器などの様に「三」の数字で括る文化があり、夜景にもこの文化が取り入れられました。この日本三大夜景は広く知られているにもかかわらず、いつ、誰が決めたかはっきりとした記録が残っていません。しかし私はいつ、誰が決めたかはっきりしてないからこそ、日本三大夜景に特別感が増し、夜景を眺めたときの想像が膨らむ楽しさがあると考えています。
日本三大夜景のスポットには共通点が3つあります。1つ目は山上にある夜景スポットであることです。夜景には街の中から眺める夜景やライトアップなど様々なジャンルがありますが、この日本三大夜景の存在により「夜景を山から俯瞰する」というイメージ、夜景文化がより強くなったと考えています。いずれの3スポットは街の全景を一望することができ、夜景を眺めているとその旅で巡ってきた名所を確認することができます。旅の感動が蘇り、旅がより印象的なものになります。
2つ目はいずれもロープウェイが整備されていることです。日本の観光地では高度経済成長に次々とロープウェイが建設されました。この3スポットも例外ではなく、函館山のロープウェイは1958年、摩耶山のロープウェイは1955年に、稲佐山のロープウェイは1959年に開業しています。ロープウェイに乗り込み、上昇するにつれて少しずつ夜景が見えてくるシチュエーションにはワクワクさせられますよね。
3つ目はいずれの街も港街であることです。1859年に日本とアメリカとの間で結ばれた日米修好通商条約により函館、新潟、横浜、神戸、長崎が開港しました。日本三大夜景の街がすべて含まれています。開港後、都市の人口も増えて、開港により街が発展しました。上記で挙げた5港の内「函館・神戸・長崎」と「新潟・横浜」の違いは街を俯瞰できる山の有無です。新潟と横浜には街の近くに街全体の俯瞰できるような山が存在しません。開港した5港の内、山がある3つの街が三大夜景に選ばれているのは何か縁を感じますね。
日本三大夜景のスポット函館山、摩耶山、稲佐山のご紹介をいたします。
函館山は函館市街の南西にそびえる高さ334mの山です。函館の街から函館山を眺めたときに、牛が寝そべっている様子に見えることから臥牛山とも呼ばれています。函館市街のどこにいても函館山が見え、街のシンボルとしても親しまれています。
函館山の夜景の魅力はただ街全体を眺められることだけではありません。函館は市街を挟み込むように湾曲する海岸線が特徴的で、このくびれのように見える姿が美しく訪れる人々を魅了します。半島側から街を俯瞰できる場所は他の街にもありますが、函館の場合は展望台から街までの距離、街の厚みが見事で、地理的条件が織りなす芸術的な夜景が広がっています。
住所 | 〒040-0000 北海道函館市函館山 地図はコチラ |
夜景スポット情報ページ | 函館山展望台の夜景スポット情報ページ |
神戸市街の背後にそびえる六甲山地には非常に多くのビュースポットが存在します。摩耶山の展望台もその一つです。摩耶山の展望台「掬星台」は「手で星を掬う」が由来です。
掬星台からは、神戸ポートタワーや六甲アイランド、神戸大橋などベイエリア、神戸空港、神戸市街をメインに大阪市街の夜景など大阪平野に広がる夜景を一望することができます。遠くは関西国際空港まで望め、そのスケールの大きさには驚かされます。まさに目の前に広がる地上の星を救いたくなるような美しさです。
住所 | 〒657-0104 兵庫県神戸市灘区摩耶山町 地図はコチラ |
夜景スポット情報ページ | 摩耶山 掬星台の夜景スポット情報ページ |
長崎市街の西にそびえる高さ333mの稲佐山。東京タワーと同じ高さですね。山頂には電波塔が建ち、夜はライトアップされます。その姿は地上からも確認でき、見上げても美しいですが、見下ろすともっと美しいのが稲佐山の魅力です。
山頂にはガラス張りで円柱型の展望台があります。展望台からは長崎市街の夜景を一望。港を中心に街明かりが広がり、周囲は山々が囲みコントラストに富んでいます。長崎は坂の街で、山の斜面を這うように明かりが広がる様子は長崎らしい夜景と言えます。長崎港の入り口に架かるのは女神大橋で、その名の通り女神のように美しくライトアップされます。私が夜景の美しい街として評価している街は大抵このような大きな橋が存在します。
住所 | 〒852-8011 長崎県長崎市稲佐町 地図はコチラ |
夜景スポット情報ページ | 稲佐山山頂展望台の夜景スポット情報ページ |
日本三大夜景の話を聞くと、ある疑問を持つ方もいるかと思います。それは「大都市の東京の方が夜景が綺麗じゃないの?」「大阪は?」など。確かに日本三大夜景の街よりもさらに規模が大きい街はあります。特に日本三大都市である東京、大阪、名古屋の人口規模は以下の表の様に圧倒的です。
日本三大夜景 | 函館(函館山) 約25万人 |
神戸(摩耶山) 約152万人 |
長崎(稲佐山) 約40万人 |
日本三大都市 | 東京(23区) 約973万人 |
大阪 約275万人 |
名古屋 約233万人 |
※2023年時点の人口
確かに大都市の夜景は光量が多く圧倒させられるものがあります。東京スカイツリーから俯瞰する関東平野に広がる夜景も迫力があります。ただ、私は夜景の評価基準というのは光量だけではないと考えます。それは、その土地ならではの特徴、地理的条件が織りなす美しさです。函館山から俯瞰するくびれ、摩耶山から俯瞰する湾曲を描く大阪湾、稲佐山から俯瞰する斜面を這うように広がる街明かりなど、それぞれ特色ある夜景を魅せてくれます。私のこれまでの夜景取材の経験上、一見夜景のイメージがそれほどない街の夜景でも、地理的特徴が相まって想像以上に綺麗な夜景を目にすることがあります。例えば、青森県むつ市の釜臥山から俯瞰する「アゲハチョウ」の様に見える夜景など。日本三大夜景からも、都市の規模=夜景の美しさとは限らないことを考えさせられます。
ライター名 | 夜景写真家 中村勇太 |
プロフィール | 日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。 |
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夜景写真家 中村勇太公式サイト 夜景FAN | 夜景写真家・フォトグラファー 中村勇太 |
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配信日 | 2022年10月20日 12:01 |
更新日 | 2024年01月31日 15:35 |