OMO7横浜 by 星野リゾートの外観
JR関内駅の改札を出ると、正面にひと際存在感のある建物が立ちはだかります。レンガタイル張りのファサードに、規則正しく並ぶ窓。かつて横浜市庁舎として60年以上この街を見守ってきた建物が、いま「OMO7横浜(おも) by 星野リゾート」(神奈川県横浜市中区)として、2026年4月21日に新たな扉を開きました。
夜景メディアとして取材に伺ったのですが、このホテルで体験した夜景は、みなとみらいの高層ビルから見下ろすそれとは、根本的に性格が違いました。低層から街の熱気ごと受け取るような、そんな夜景です。
一泊を通じて見たもの、聞いたこと、食べたものを順を追ってレポートします。
OMO7横浜が入るのは、三井不動産を代表企業とする8社が手がける大規模複合施設「BASEGATE横浜関内」の一画です。2026年3月にグランドオープンしたこの街区は、JR関内駅前の旧横浜市庁舎跡地を再開発したもので、ホテルはその中核を担っています。
横浜市認定歴史的建造物
ホテルが使用しているのは、建築家・村野藤吾氏が設計し1959年に竣工した旧横浜市庁舎行政棟。横浜開港100周年記念事業として建てられ、60年以上にわたり横浜市政を支えてきた建物です。2025年8月には、戦後の建造物として初めて「横浜市認定歴史的建造物」に認定されました。
ホテルのコンセプトは「気分上々、ハマイズム」。1859年の開港以来、海外と日本の文化が出会い独自の発展を遂げてきた横浜のエネルギーを「ハマイズム」と表現し、歴史と現代の感性を掛け合わせた滞在を提案しています。
エントランスに広がるGo-KINJOマップ。OMOレンジャーが足で稼いだ情報が詰まっている
ロビーにあたる「OMOベース」に足を踏み入れると、まず正面の大型マップが目に入ります。「Go-KINJOマップ」と名付けられたこのイラストマップは、関内・野毛・横浜中華街などのエリアをカバーし、スタッフが実際に足を運んで集めた情報が詰まっています。
「ハマイズムコレクション」。村野藤吾氏デザインの時計(実物)や旧市庁舎の資料が並ぶ
ロビーの一角には「ハマイズムコレクション」と呼ばれる展示スペースがあります。旧市会棟本会議場の絨毯、旧市民広間の大階段の手すり、そして村野氏がデザインした時計の実物など、かつての市庁舎の記憶が丁寧に展示されています。
OMOベース 大階段手すり
足元に目を向けると、床には斜めに組まれた矢筈貼りの拍子木タイルが広がっています。旧市庁舎のものを保存・活用したもので、一部新調された箇所もあるとのことですが、どこが新旧の境目かを探してみるのも楽しみのひとつです。空間を支えるコンクリート柱も当時のままで、表面に杉板型枠の細かな模様が残っています。2階のラウンジに置かれた1シーターのグリーンのチェアは、旧市会棟本会議場の議員席を転用したもの。チェックインカウンター内の柱には、旧市民広間で長く市民に親しまれてきた大時計が、今も静かに時を刻んでいます。随所に埋め込まれた記憶を辿りながら歩くだけで、ここが単なるホテルではないことが伝わってきます。
チェックインはフロントのタブレット端末で行う。日本語・英語・中国語などに対応
チェックインはフロントに設置されたタブレット端末で行います。画面の案内に沿って進めるだけで手続きが完了し、その後スタッフからパンフレットや館内の説明を受ける流れです。
端末操作後はスタッフが館内の見どころや周辺エリアについて案内してくれる
端末での手続きを終えると、スタッフからパンフレットを受け取りながら館内の案内を受けます。
今回宿泊した「やぐらルーム」。旧市庁舎のインテリアカラーから着想した「レガシーカラー」が基調
客室は全276室、広さ20㎡から73㎡の全9タイプ。今回宿泊したのは「やぐらルーム」(24〜25㎡、1〜3名、ツイン)です。旧横浜市庁舎のインテリアカラーから着想を得た「レガシーカラー」が基調で、やぐらルームは旧市会棟本会議場の絨毯の色をイメージした緑でまとめられています。広々としたソファのリビングスペースと、十分な高さのダイニングが確保されており、ゆったりとした時間が過ごせます。
やぐら寝台
「やぐら寝台」と呼ばれるベッドの構造がベッドを清潔に保てる設計になっているのも、細かな気遣いを感じるポイントです。
客室のテーマカラーとして使われている赤・青・緑は、いずれも旧市庁舎内で実際に使われていた色が由来です。赤は旧議長室の絨毯、青は庁舎内の磁器質タイルの艶、緑は旧市会棟本会議場の絨毯と議員席の色をイメージしています。客室へ向かうエレベーターホール(1・2階)には、その青い磁器質タイルとエレベーター扉脇の白い大理石の三方枠が当時のまま残されており、庁舎時代の面影がもっとも色濃く感じられる場所のひとつです。エレベーターのボタンに刻まれた数字のフォントも、村野氏が手がけたフロア階数サインのデザインを継承・発展させたもので、館内のどこを見ても歴史と現代が重なり合っています。
客室から見た夕刻の横浜スタジアム。試合中の熱気がここまで伝わってくる
この日は横浜DeNAベイスターズの試合がありました。スタジアムから湧き上がる歓声と、外野席を青く染めるペンライトの明かりが窓ごしに見えます。二重窓越しでも音が聞こえてくるほどの距離感です。総支配人の羽毛田さんが「低層階だからこそ感じられる熱量がある」と話していたことが、部屋に入った瞬間に理解できました。
試合が進むにつれ、スタジアムはブルーの光で満たされていきました。これだけ近くからスタジアムを俯瞰できる宿泊施設はなかなかありません。夜景スポットとしての顔は、屋上だけでなく客室にもあります。
昼のOMOベーカリー。カレー伝来の地・横浜にちなんだカレーパン5種類が看板メニュー
1階のOMOベーカリーは、OMOブランド初のベーカリー業態です。朝はカフェテリア形式のセットメニュー、昼から夜にかけてはカレーパン5種類をメインに展開するオールデイスタイル。約30種類からパンを選べます。
チェックイン後の昼間に立ち寄り、カレーパンをいただきました。横浜はカレー伝来の地とも言われており、そのルーツを意識したラインナップになっています。スパイスの効き方と衣のサクサク感のバランスがよく、街歩きの前にちょうどよいボリュームです。
夜はパンをつまみにお酒を楽しむ「パン飲み」スタイルに
夜は「パン飲み」、つまりパンをつまみにしながら酒を楽しむスタイルで再び利用しました。夕食後の利用にも丁度良いボリュームでした。
OMOレンジャーによる「野毛ホッピングセレクション」。ボードを手にOMOレンジャーが解説してくれる
チェックインしたあと、16時30分からロビーで「野毛ホッピングセレクション」が始まりました。OMO7横浜から徒歩約15分の距離にある野毛エリアは、戦後の闇市から発展した飲食街で、エリア内に約600店舗の飲食店が集まっています。都橋商店街だけで、130メートルほどの通りに1階と2階合わせて60店舗が入っているとのことです。
この日担当のOMOレンジャー(スタッフ全員がOMOレンジャーとしてトレーニングを受けています)が案内してくれた「野毛を楽しむ三か条」は、「お店の候補を多く持つべし」「はしご酒も愛すべし」「つながりを大切にすべし」でした。
この日はOMOレンジャーが「野毛の夜更かし」にちなんだお店も紹介してもらえました。野毛を楽しむ三か条の詳しいお話や、おすすめのお店は是非宿泊時にOMOレンジャーから聞いて下さい。
OMOダイニングの夕食。左手前はオマール海老の麻婆ホットパイ、蒸篭には赤と白の餃子
夕食はホテル内のOMOダイニングで。この日いただいたのは、赤と白の餃子セット、オマール海老の麻婆ホットパイ、蒸し鶏のネギソース、クラシックナポリタン目玉焼きのせの4品です。
横浜はナポリタン発祥の地とも言われる街。ナポリタンがメニューに入っているのは単なる定番ではなく、横浜の食の歴史への目配りです。
麻婆ホットパイはパイ生地の中に麻婆がたっぷりと詰まった一品で、見た目のインパクトがあります。
赤と白の餃子はスパイシーなラムとプレーンの2種類で、蒸篭で運ばれてきます。横浜の中華文化の影響が、こうした料理の組み合わせにも自然に表れていました。街歩きの前後に「ちょい飲み・ちょい食べ」を楽しむにもちょうどよいラインナップです。
HAMAKAZEテラスの雰囲気
旧横浜市庁舎の屋上を活用した「HAMAKAZEテラス」は、全長約45メートルにわたる開放的なスペースです。見晴らし台、足を伸ばして寛げるソファスペース、テーブル席が並んでいます。テラスの一角には高さ約13メートルの「愛市の塔」がそびえ立っています。かつてこの地に魚市場があったことから漁網をイメージしてデザインされたモニュメントで、夜はライトアップされてテラスのランドマークになっています。
試合が行われている横浜スタジアム
テラスに出ると、総支配人・羽毛田さんが話していた感覚がそのまま体感として伝わりました。野球の歓声、電車が通る音、車のエンジン音、飲食店から漏れてくる話し声。街の音がそのまま聞こえてくる高さに、このテラスはあります。
青く染まる横浜スタジアム
青く染まったスタンド、グリーンの芝、周囲に広がる関内の街の明かり。みなとみらいの展望台から見る整然とした夜景とは違う、街の暮らしや歴史の上に積み重なった光が眼下に広がっているような感覚です。
お酒とフード。奥にはスタジアムの明かり
テラスの「HAMAKAZEキッチン」ではお酒やフードの販売があります。クラフトビールやお酒にあうフードを片手に、横浜ゆかりのジャズなど多彩な音楽が流れます。金曜・土曜には横浜のプロミュージシャンによる生演奏も行われます。
関内の夜をたっぷり味わい、部屋に戻るとスタジアムの照明はすでに落ちていました。静かになった窓の外を眺めながら、横浜の一夜が幕を閉じました。
OMOダイニング 朝のビュッフェ
翌朝、OMOダイニングで朝食ビュッフェ「Yokohama Morning Specialties」をいただきました。広報担当スタッフへの取材で印象的だったのは、「一品一品の素材や仕上げにこだわる」という考え方が朝食の軸になっているという話でした。
目玉焼きのライブキッチン
目の前でつくる目玉焼きのライブキッチン、そして横浜らしさを意識した点心3種類の蒸篭も見どころです。
中華粥。トッピングは好みで
横浜に全振りするのではなく、定番を押さえつつ横浜らしさをさりげなく感じられるバランスを意識しているとのこと。中華粥にもその考え方が表れているそうです。サラダにはチーズやサーモンなど自分でカスタムできる素材も豊富に用意されています。
「横浜レガシーウォーク」のガイドの様子
チェックアウト前に「横浜レガシーウォーク」に参加しました。街を知り尽くしたOMOレンジャーとともに、関内エリアの歴史的建築を巡るガイドツアーです。通常の観光では気づかないような歴史の断片や建物の意匠を解説していただきながら街歩きをします。
OMO7横浜 by 星野リゾートの総支配人の羽毛田さん
取材の機会をいただき、総支配人の羽毛田さんにお話を伺いました。
──夜景メディアとして取材に来たのですが、このホテルならではの「夜景の見どころ」を教えてください。
「高層階からの眺望という形ではないんですが、この関内というエリアに近い、低層階だからこそ感じられる街の景色があります。浜スタが真横にあって、野球の熱気が伝わってくる。電車の音、車の音、人の声という雑踏の感覚がすごくある。それが音楽と重なって、一番このエリアを代表する風景じゃないかなと思っています」
──高層からの眺望とは異なる、この距離感ならではの夜景だと感じました。羽毛田さんはどのように捉えていますか。
「決して高ければいいってもんじゃないな、と。やっぱり街の中の暮らしや歴史、文化に紐づいてるような街の明かりがあることが大事じゃないかなと思います。みなとみらいのあの夜景ももちろん素敵なんですが、この関内から見える夜景は、近代日本の発祥の歴史や文化を感じながら、街の息づきを感じてもらえるような景色だと思います」
──建物のデザインについても、村野藤吾氏へのリスペクトが随所に感じられました。
「残せるところはしっかり残して、それを意匠としてデザインにも活用し、ディスプレイもしています。例えばBASEGATEをよく見ていただくと、旧市庁舎のコンクリートの支柱が上に行くに従って細くなるデザインを、新しいタワー棟にも取り入れています。村野藤吾さんのデザインをリスペクトして、新しい建物にも入れてある。遠目に見ると、上に向かって細くなっていくのがわかります」
──夜景が好きな読者へのメッセージをお願いします。
「もちろん横浜スタジアムの景色もそうなんですが、それを見てやっぱり横浜が開港以来持ってきた、カルチャー的なものを感じていただけると、新しい横浜の見方が体験できるんじゃないかなと思っています。音と、熱気と、雰囲気と、音楽と。みなとみらいでは体験できないものが、この屋上からの夜景にあると思います」
「新旧融合」という言葉は開発プロジェクトのキーワードとしてあちこちに登場しますが、OMO7横浜の場合はそれが建物の細部にまで丁寧に実装されていました。村野藤吾氏の数字フォント、旧議長室の絨毯の色、大階段の曲線を描く手すり。泊まるほどに発見があります。
夜景については、とにかく「近さ」が印象的でした。横浜スタジアムの歓声を客室で聞きながら、屋上から街の熱気を肌で感じる。そういう夜の過ごし方がここにはあります。
OMO7横浜 by 星野リゾートは関内駅徒歩1分という利便性もあり、横浜の歴史の中心地・関内を、より深く知る拠点として、夜景好きの方にもぜひ訪れてほしいホテルです。窓の外に広がる夜景の向こうに、この街が積み重ねてきた時間の息づきを静かに感じられます。
| 施設名 | OMO7横浜(おも) by 星野リゾート |
| 所在地 | 神奈川県横浜市中区港町1丁目1番1 |
| アクセス | JR根岸線「関内」駅徒歩1分、横浜市営地下鉄ブルーライン「関内」駅徒歩1分、横浜高速鉄道みなとみらい線「日本大通り」駅徒歩7分 |
| 客室数 | 276室(全9タイプ、20㎡〜73㎡) |
| 料金 | 1泊1室36,000円〜(2名利用時、食事別、税込) |
| 気分上々、ハマナイト | 毎日 19:00〜22:30(ラストオーダー22:00)/HAMAKAZEテラス/宿泊者無料 |
| 開業日 | 2026年4月21日 |
| 公式サイト | hoshinoresorts.com |
中村勇太
夜景写真家/夜景ジャーナリスト日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。
夜景撮影、執筆、解説・ガイド、講師、イベントの企画・監修
日本テレビ「ZIP!」「ヒルナンデス!」、テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」「じゅん散歩」、NHK「ひるまえほっと」など
| 配信日 | 2026年05月14日 22:00 |
| 更新日 | 2026年05月15日 03:21 |
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